『ひとひら』監督の吉田奈津美です。
1月30日、無事に上映会を終えることができて、そして大切に作ってきた作品をたくさんのお客さんに観ていただけて、本当に良かったです。ありがとうございました。
今は色々な方から感想をいただいて、それを受けてまた色々と考え、ムムム、と悩む日々です。
今回、『ひとひら』をつくるにあたり、脚本を書いているときから撮影現場の画作り、そして編集まで、いつかこの作品を観るお客さんのことをいつでも考えていました。
しかしその中で、いずみと陽一の痛みや葛藤をお客さんへ「伝えられているかどうか」という不安は最後まで消えませんでした。
また、私の表現力が足りないせいで、こんなにも苦しみながら生きている2人の心情が理解してもらえないのではないかと考えると、こわくて悲しくて自分の力不足に涙が出るときもありました。
ただ、『ひとひら』はまだまだ稚拙な部分が沢山ありますが、今回の作品で「観客を信じる」、どんなに不安でもまだ見ぬお客さんを信じて自分に出来る精一杯を尽くす、という映画をつくる上での根本と向き合うことができました。また、観てくださった方々の数だけ、少しずつ違っているいずみや陽一が生まれる幸せを知りました。
当日。作品上映後にいただいた拍手がとっても嬉しかったことや、壇上から見えたたくさんのお客さんのこと、ずっとずっと忘れないと思います。
改めて、共同監督に名乗りを上げてくれて、ずっと影ながら支えてくれていたりんかちゃん、時にはぶつかりながらも最後まで制作代表として頑張ってくれた佐藤くんをはじめとする、班員やスタッフのみんな、それぞれの人物に息を吹き込んでくださったキャストのみなさん、毎週毎週作品と向き合ってくださった先生方、本当にありがとうございました。
実は、あの時誰々にこんな言葉をかければ良かったとか、共同監督をするならもっとこんな良い方法があっただろう、とかいまだにそういったこと考えますが、これも上映後の嬉しかった気持ちと同じように、忘れずにいたいと思います。
また、班員のみんなに関しては、夏前から一緒にいる時間が長く、恥ずかしくてなかなか感謝を伝えられずにいたこと、反省しています。ありがとうとごめんなさいをいうときロボットみたいになってごめんね。
(なんか仮眠とっているときなど「もうあいつ殺そうぜ」みたいな言葉が聞こえてきましたが、それは聞かなかったことにします。)
今回、作品をつくる過程で、思っていることを丁寧に伝えること、そして勝手に自分の思いは伝わっていると勘違いしないことの大切さを痛いくらいに学びました。自分の作りたいもの、そこにみんながついてきてもらうためにはどうしたら良いのか。たくさん考えました。
ただ、追いつめられると自分だけが苦しいと思いがちなのですが、ふと周りを見渡すと皆苦しみながらも頑張っていて、こんなに恵まれて撮影が出来ているんだといつも感謝の気持ちでいっぱいでした。
最後に、私たちに1人の大人としての責任や意識を改めて確認させてくださり、未熟な私たちを最後まで見放さずご指導してくださいましたキャストのマネージャーの方々、フィルムコミッションの方々、そしてお金の面でご支援してくださった企業の方々、心から感謝しています。
大人を嫌悪しているという主人公の物語でしたが、今回の作品は本当にたくさんの大人の方々に支えられてこそ完成できたのだと思っています。そして、私自身、『ひとひら』を通して少しずつ大人になることができたのではないかと思います。
この作品がより多くの方に観ていただけるように、そして、いつかまた少し成長して、今回と同じだけ精一杯映画をつくることができるように努力していきたいと思います。
みなさん本当にありがとうございました。
吉田奈津美