こんにちは、『めぐみ』のカメラを担当した夏井です。
大隈講堂で行われた映像制作実習の上映会から一週間が経ちました。
三日前のブログで道岡監督が僕らの班のあらかたの顛末などをまとめて書いてくれてるので、ここでは夏井目線の振り返りをしていきたいと思います。
監督のブログにもある通りに『めぐみ』は上映時間ぎりぎりまで映像のデータ化を行なっていました。そのことでTAや運営のスタッフをやっていた人たちにたくさん迷惑をかけてしまい、その上運営当日に自分たちに割り振られていた仕事も全うできずに終わり、とても恥ずかしい気持ちでいっぱいです。
そして、何よりも残念だったのは、他の班が完成させた映像を会場のスクリーンで見れなかったことで、一年間ともに企画の成長を見てきた『ふたたま』『もぐら』『湛えて』の完パケを見れなかったのが一週間経ってもいまだ心残りです。どこかで見る機会があることを願ってます。
上映会当日の振り返りをします。
僕らは午後3時に会場の大隈講堂に着いて、余裕など全くなく舞台裏でせっせと書き出しをしていました。
背水の僕らを最初に発見してくれたのは土田先生で、
「で、お前らどうなってんの?」
と冷静に現状を引き受けて、的確な指示を残され、また別の場所に去っていってしまいました。ほんの一瞬のことでしたが、それでかなりみなの頭がクリアになったのを記憶してます。
それから10分ほどして、泣きに泣いて魂が半分抜けかけていた道岡監督が舞台裏にやってきて、美術の古家さんはそんな監督に優しく付き添っていました。すごくピースでした。
そんな状態の道岡の元に、整音を手伝ってくれた高木先生が舞台裏にやってきてくれて
「道岡さん、魂抜けてんじゃん!」
と発破をかけてもらい、さらに「大丈夫大丈夫、間に合うよ」と笑顔で励ましてもくれて、かなりの勇気を貰いました。
その後の午後4時ごろ、道岡監督が舞台裏からどこかに行ってしまい、古家さんと二人で頭を抱えてパソコンを囲んでいたところで是枝先生がいつのまにか舞台裏にやってきていて、(いきなりの”是枝監督”にかなりびっくりしましたが、)是枝先生は僕らの窮状を察してか、そうではなくいつも自然体なのか、
「みんなどこにいる?」
とさりげなく尋ねてくれました。時間に追われて切迫した状況で普段の何気ない会話の時間があったことが振り返ると、とても不思議な感じでした。
その後、書き出しが終わった映像をチェックしてみると、黒みが一瞬入ってしまっているのとラスト2シーンの音ズレが発覚し、また改めて監督と頭を抱えました。
それから編集オペレータの龍郎に来てもらって急いで編集し直して、また書き出しを始めたのが17時00分ごろ。めぐみの上映予定時刻は19時15分ごろ。一回の書き出しにおおよそ2時間半かかっていたので、かなり微妙で間に合わないかもなと思いました。
その後の自分はパソコンを見守るカカシくらいのことしかできませんでしたが、その間に龍郎や上映会スタッフの近藤くん、大澤さん、藁谷くん、田中くんなどが話し合って上映会の進行スケジュールを急遽入れ替えてくれました。(勇気を持って、変更を決断してくれた上映会スタッフには本当に頭が上がりません)
18時30分すぎ、進行スケジュールが変更されたとはいえ、本当に書き出しが上映に間に合うかどうかが微妙な中で、篠崎先生が休憩中に僕らの様子を見に来てくれて、
「ここまで来たんだから最後まで絶対諦めないで」
という言葉をかけてもらいました。
篠崎先生は、道岡監督が夏休みに個別に相談に行かせてもらったり、夜遅くまでの班のミーティングに参加していただいたりして、親身な優しさとある部分での厳しさを持ってずっと接してくれていたので、最後までその優しさと厳しさを先生の言葉から感じました。
そして、最終的に19時22分に書き出しが終わり、データを上映用のパソコンに移し終わったのが19時25分。オペレーターの藁谷くん田中くんと、スイッチングの梶田くんと、予備のデータの入ったマックをお願いした須田さんと、その後ろで全体を見守る大澤さんに上映にかかる全てをお願いして『めぐみ』の制作スタッフとして会場前方右側の席に座りました。
正直に言うと、スクリーンに最初のカットが映ってからの記憶がほとんどありません。
気づいたら壇上にいて道岡監督が「タイトルと同じように色んな人やものにめぐまれましたぁ」と、これ以上ないまとめをしていたなぁ、ぐらいが鮮明で。
長期間に渡って一つの映像と密接になりすぎて、映像やシーンがゲシュタルト崩壊してしまったような感じでした。
あと、エンドロールが終わり、数秒の静寂が流れたあとに会場から拍手が聞こえるまで、あれは何秒だったんでしょうか。とてもとても長い静寂で、ただ、拍手が聞こえて壇上に呼ばれた時に「なんとかなったかも」と胸をなでおろすことができたとしか記憶してません。
夜21時、上映会後に行われた打ち上げからは、都合よく記憶が結構しっかり戻っていて、
みなが一年間の労を互いにねぎらう中、道岡が単独で是枝先生を質問攻めにしたあと、なぜかNHKの取材カメラを回すという???な局面もあり、
さらには是枝監督の『万引き家族』がアカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされるという素晴らしいニュースも飛び込んできて、かなりカオスで祝祭的な空間でした。
本当にギリギリでキツくて意味がわからなくなったりしましたが、上映会のあの日のことを思い返すたびに、この授業に集まっていた人々の素晴らしさと誰かと何かを辛抱強く作っていくことの大切さを噛み締めるのだろうと思います。
上映会と授業は終わってしまいましたが、これからは自分たちが上映会で流した映像を見直して、編集で間に合わなかった部分を修正し直して、これから『めぐみ』を観る機会がある人がゆったりと映像に馴染めるような編集作業の続きをやっていこうと思います。
(文責:夏井 俊吾)
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